股関節や膝が痛い皆さんは病院でどのような病名を診断されましたか?
痛みが事故や転倒等による骨折等ではなく、また年齢にもよりますが、変形性股関節症や変形性膝関節症と多くの方が診断されたと思います。
この記事を読まれているあなたは痛みが改善せず、手術の選択を医師から迫られたけど、本当に手術をして良いのかと悩んでいませんか?
実は手術をした事で痛みが無くなる保証はありません。
- なぜ股関節や膝が痛いのか?
- なぜ手術をすると痛みが良くなるのか?
あなたは医師からどのような説明受けましたか?
おそらく「軟骨がすり減っているから痛みが出ている」、「変形しているから痛みが出ている」というような説明を受けている方が多いと思います。
しかし、軟骨の摩耗や変形は痛みとは関係ないのです。
私は総合病院で整形外科、脳神経外科、内科、外科、回復期病棟、クリニックで経験を積んだ経験年数10年以上の理学療法士です。整形外科疾患を専門にしております。
この記事では、股関節や膝の痛みに対する
- 手術をなぜ積極的に薦めないのか
- 手術をしないいわゆる保存療法では何をすれば良いのか
を解説します。そしてこれを読めば、手術をせずに痛みを解決の方向へ導ける可能性があります。
痛みの解決にまず初めに考えなければならないのは、手術ではなくあなたの歩き方を改善するためのインソールや適切なエクササイズです。
手術の内容
変形性股関節症、変形性膝関節に対する手術として代表的な手術として人工関節置換術があります。
この人工関節置換術は関節を丸ごと人工物に変える手術となります。
THAとは人工股関節置換術、TKAとは人工膝関節置換術の事です。
手術のメリット
手術のメリット
- 関節の可動範囲が拡大する可能性
- 関節の位置関係の改善
関節の可動範囲が拡大する可能性について
関節が変形を起こすと関節の隙間が減ったり、骨棘といった棘の様な物が出来るので関節の可動範囲が制限されます。
人工関節により関節の隙間や骨棘は解消されるので関節の可動範囲の拡大が得られる可能性が期待できます。
関節の位置関係の改善について
変形性股関節症で関節が脱臼しているようなケースがありますが、人工関節により脱臼が解消されます。
変形性膝関節症ではO脚やX脚、膝の捻じれが生じますが、人工関節によりそれらが解消されます。
手術のデメリット
手術のデメリット
- 合併症の可能性
- 痛みが長引く可能性
合併症の可能性について
数%の割合で以下の合併症が生じる可能性があります。
- 感染症
- 神経損傷による運動麻痺
- 骨折
- 深部静脈血栓症
- 人工関節のゆるみ・脱臼
痛みが長引く可能性
術後の管理やリハビリによっては手術の創の痛みが長引く場合や炎症の痛みが慢性化する場合があります。
場合によっては結局、手術をしたのに痛みが残ってしまったり、改善が十分に得られない事があります。
手術適応例
手術適応例
- 生活に支障を来すほどの関節の可動範囲の制限がある場合
- 著しい脱臼が生じている場合
- 保存療法で疼痛が改善しない場合
※手術の可否は医師の判断が必要です。
病気の進行具合、年齢によっては医師から保存療法を薦められる場合があります。
生活に支障を来すほどの関節の可動範囲の制限がある場合について
関節が変形を起こすと関節の隙間が減ったり、骨棘といった棘の様な物が出来るので関節の可動範囲が制限されます。
関節の変形によっては可動範囲が非常に狭くなり、日常生活動作に支障を来すことがあります。
関節の構造上の問題で関節の可動範囲が制限されている場合は人工関節が有効の可能性があります。
著しい脱臼が生じている場合について
変形性股関節症では症例によっては、関節が脱臼しており、左右の脚の長さ著しく異なるケースがあります。
歩く時の身体の使い方に偏りが出やすく、身体の痛みも生じやすいです。
人工関節によって脚の長さがある程度、揃えられます。
保存療法で疼痛が改善しない場合について
病院を受診し、保存療法を選択すると、投薬、理学療法による運動療法、いわゆるリハビリを行い症状の経過を評価します。
保存療法を行った結果、改善が認められず、医師が手術の適応であると判断した場合は手術適応例となります。
手術不適応例
手術不適応例
- 若年である場合
- 保存療法で疼痛が改善する場合
※手術の可否は医師の判断が必要です。
病気の進行具合、年齢によっては医師から保存療法を薦められる場合があります。
若年である場合について
人工関節の耐用年数は20年前後と言われています。
若年のうちに手術をすると、将来的にもう一度入れ替えの手術が必要となります。
どのタイミングで手術を行うかは医師との相談が必要です。
保存療法で疼痛が改善する場合について
痛みの原因が脂肪体や筋肉といった組織による場合です。
この場合、手術をしても結局、根本的な解決にはなっていない事が多いのです。
これが先ほど記載したデメリットのうち、手術後に痛みの改善が十分に得られない場合にあたります。
軟骨には痛みの受容器が存在せず、「軟骨がすり減った」は痛みの原因にはなりません。
また関節の変形は変形を示しているだけで痛みと必ずしも関係しているとは限りません。
関節が変形していても痛みが無いケースは多く存在します。関節の痛みに関して、詳しくはこちらの記事「【関節の痛みの正体】軟骨や変形では無い!?実は脂肪体だった!!」をご参照ください。
手術を積極的に薦めない理由
関節の変形自体が痛みの原因にはなりません。手術を薦めない最大の理由は手術が痛みの根本的な解決にはならないことが多いからです。
手術をしたのに痛みが残ってしまったり、改善が十分に得られない場合があります。
その最大の原因は手術前の歩き方のクセです。手術をしても歩き方のクセが治るとは限りません。
ほとんどの患者さんは手術前のクセが残っているので、せっかく手術をしてもまた関節に負担をかけてしまい、痛みの改善が十分に得られない可能性があります。
痛みと歩き方のクセに関して、詳しくはこちらの記事「【現役理学療法士が解説】インソールが痛みに効くって本当!?長く続く辛い痛みにはインソールが最適!!」をご参照ください。
私は手術前に術前評価という形で患者さんと関わる事があります。
その手術前の介入で痛みを軽減できたり、歩き方を改善できるケースを経験します。
全てのケースで痛みを軽減させられる訳では無いのですが、手術をしなくても保存療法で対応できるのではないかと考えるケースがあるのも事実です。
こういったケースが少なくないので、変形性股関節症や変形性膝関節症と診断され、痛みが一番の問題なのであれば、私は治療の第一選択として手術を積極的には薦めません。
まずは保存療法で改善が得られるかどうかといった評価が必要だと考えております。
保存療法で症状を改善する方法
最も必要な事は歩き方のクセの改善です。
歩き方のクセを改善するには個人に合ったインソールや適切なエクササイズが必要です。
個人に合ったインソールや適切なエクササイズを行う事で身体の使い方の偏りが減り、歩く際に身体がまんべんなく使えると歩き方のクセが軽減し症状の改善が得られる可能性があります。
インソールと痛みの治療院ではその個人の歩き方にに合わせたインソールをオーダーメイドで作製しております。
またインソール作製を通じて適切なエクササイズの指導を行っております。
適切なエクササイズのチェック方法に関しては「【間違いだらけ!!】筋力トレーニングやストレッチを行っているのに痛みが改善されない理由」の記事をご参照ください。
まとめ
関節の変形や軟骨がすり減っていることが痛みの原因にはならないため、人工関節の手術をした事で痛みが解決するとは限りません。
個々に合ったインソールやエクササイズにより歩き方のクセを改善する事が痛みの解決に繋がる可能性が高いです。
作製しているインソール、ご依頼の流れや作製コースに関しては「サービス案内」をご参照ください。